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誕生日の子どもたち
トルーマン カポーティ
誕生日の子どもたち
人気ランキング : 149786位
定価 : ¥ 1,700
販売元 : 文藝春秋
発売日 : 2002-05


価格:¥ 1,700
納期:通常24時間以内に発送

待望の新訳
 龍口直太郎のカポーティの翻訳は(龍口訳の時代がずいぶん続いた)文章がゆるくて、カポーティの原作とは違うような気がしてならなかった。現在は川本三郎訳のものが新潮文庫で手にはいるので、これを機に、この三者をならべて読んでみることにした。
 そして結論。今度の村上訳はすばらしい。翻訳のうまさもさることながら、なにより小説家として鍛えあげた文章のセンスがいい。煩雑になるが、一例をあげてみようか。
「誕生日の子どもたち」の語り手は、アメリカの田舎町に住む少年である。きのうの夕方、ミス・ボビットがバスに轢かれた、という文章で小説は始まる。少女は、ちょうど1年前、やはり同じ6時のバスで、母親とともにこの町にやってきた。映画でいえばここがファーストシーンだ。やせっぽちの10歳の女の子ながら、もう大人のコケットリーをもっている彼女は、母親をしたがえて、バスが巻き上げていった土埃のなかから姿をあらわす。遊んでいた少年や少女たちは、このミス・ボビットの風変わりなようすに度肝をぬかれて、言葉もなく見守っている。
 そのときの少女の歩くようすを、龍口は「のっそりのっそり」と訳し、川本は「気取った歩きかたで」と訳す。「つんとすまして」というのが村上訳。のっそりのっそりはないんじゃないかな、と思う。
 娘の後ろからやってくる母親について、龍口は「痩せ細って毛深い女」と訳し、川本もまた「やせた、毛深い女」と訳す。村上はこの部分を、「ぼさぼさ髪のやつれた女」と訳す。「毛深い」と「ぼさぼさ髪」では、どうです、ずいぶんイメージが違うでしょう。
 母親の表情についても、「この夫人は物静かな眼を持ち、空腹そうな微笑をたたえ」と龍口は訳し、川本は「おとなしそうな目をして、お腹をすかせたみたいな微笑を浮かべて」と訳す。空腹そうな微笑というものを、私は寡聞にして知らない。しかし村上訳の「押し黙った目、ひもじげな微笑み」の「ひもじげな微笑み」ならば、精神的な卑屈さの混じったうすっぺらな笑いとして、イメージすることができる。小説を読みすすめていけば、「おとなしそうな目」より「押し黙った目」のほうがこの小説にふさわしいことがわかってくる。
 翻訳は時代にも左右される。「無頭の鷹」のなかに、龍口が「詩を引用して見せる妖精のような黒人の少年」、川本が「詩を引用してみせる美しい黒人の少年」と訳している部分がある。村上春樹はここを「詩を引用する若いゲイの黒人」と訳す。fairy の意味が「妖精の」から「美しい」、そして「ゲイの」へと時代を反映してかわっていった。ニューヨークの夕刻、町にたむろする人物という設定、ましてやカポーティなのだから、ここはゲイという一語がやはり適切。
 村上春樹の言葉の選びかたは、こんなふうに、じつに注意深くて繊細だ。まあ、小うるさいことはこのあたりにして、あとはあなた自身で、この奇妙で物哀しい物語をじっくりとお楽しみ下さい。
装丁かっこよすぎです
まず、装丁が文句無くかっこいいです。
もうこれだけでも、買いかもしれません。
勿論中身も期待をまったく裏切りません。
このイノセンスは、萩尾望都の「訪問者」と同じ種類
のものではないでしょうか。
つまり「僕のこと愛してるんだよね」と訊きたいけど、
怖くて訊けないという。
クリスマス3部作は以前読んだことがあるにもかかわらず、
涙してしまいました。
永遠に色あせることのない作品だと思います。
誕生日の子どもたち
本はいくつかの短編になっていて、とても読みやすい。またそれぞれに少年、少女のイノセンスが書かれていて、我を振りかえたりもした。心理の勉強をしている方なら、ぜひ読んでみるといいかとおもう。
カポーティの魅力
 カポーティは私の好きな作家の一人ですが、バディーもの3作は特に、初めて読んだ際感じた、切なさ・儚さ・脆さ、といったものが読後ずっと尾を引いて、以来8年近く再読を避けていました(感傷的なものに心の中を支配されたくなかったのです。「おじいさんの思い出」は涙せずには読めませんでした)。改めて読み返してみると、意外にも先のような感情は湧いてきませんでした。それよりは、著者の生い立ちを思うと、自伝的な作品を描くことへの勇気(恐らく、簡単には触れられない部分であったのではないか)や、肉親やそれを取り巻く複雑な関係を浄化させ作品として描きあげる、著者の真摯な姿勢に打たれました。中でも「あるクリスマス」は、初めて読んだ時とは180度違う印象を受けました。大人よりも大人であり、より良い意味で寛容であり、柔軟性のあるこどもの視点で描かれている、爽やかな作品です。(以前の印象では、なんてどろどろとしているのだろう、「クリスマス」なんてタイトルだけではないか、と思ったものですが。)また、新たなカポーティの魅力を感じさせて下さった訳者には、感謝の意が絶えません。
"永遠の少年"カポーティの世界
「ある意味で成長することの痛みを常に書き続けていた」カポーティの"イノセンス"をテーマに集められた短編集。心温まる『クリスマスの思い出』『おじいさんの思い出』などと、不吉な影の漂う表題作などの両方が集められ、これ一冊で作家カポーティが抱えていた心の二面性を見渡すことができます。村上春樹さんが高校時代に圧倒されたという『無頭の鷹』は、個人的に"村上訳"を待ち望んでいました!
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